【パンと本 第4回】「からすのパンやさん」作・絵:かこさとし

 

新年のざわついた雰囲気も落ち着きを取り戻し、冷たい空気が一段と身にしみるようになってきました。寒さが苦手な人は春が待ち遠しくて仕方がないのではないでしょうか。さて、【パンと本】の第4回は、心があたたまる「からすのパンやさん」をご紹介します。

 

 

からすの街、いずみがもり。そのいずみがもりの、くろもじ3丁目にあるパン屋さんに4羽の赤ちゃんからすが誕生したところから物語ははじまります。パンやさんのお父さんとお母さんは、羽の色からチョコちゃん、リンゴちゃん、レモンちゃん、オモチちゃんと名付け、愛情たっぷりに育てますが、パンやさんとの両立は大変です。仕事中でも赤ちゃんたちが泣き出したら、あやしたりオムツを取り替えたり。おかげでパンを焦がしてしまったり、半焼けにしてしまったり。お客さんを待たせてしまったり、お店を散らかしたままにしてしまったり。気がつけば、パンを買いにくるお客さんはどんどん減ってしまいました。

そんな中、チョコちゃん、リンゴちゃん、レモンちゃん。オモチちゃんの4羽は元気にスクスク育っていきます。いたずらしたり、おなかがすいた!とおねだりしたり。いつしか、商品にならない焦げたパンや半焼けのパンが、チョコちゃんたちのおやつとなりました。

あるとき、他のからすの子どもたちが4羽のおやつに興味を示します。「変わったパンだね。おいしいの?」「おいしいよ。食べてごらん」「ほんとだおいしい!」「明日買いにくるから取っといてね」「ぼくも」「わたしも」チョコちゃんたちはさっそくお父さんに報告。パン作りを手伝うことにしました。そして、とってもステキなめずらしいかたちの、おいしくて楽しそうなパンが完成。その香ばしい香りが森いっぱいに広がって、森じゅうのからすがパンやさんに集まって騒ぎが大きくなって——————。結末は作品でお楽しみください。

 

一番の見所はなんといっても、家族みんなで作ったパンのバリエーションでしょう。見開き2ページにずらりと並ぶパンは、実に80種類以上!パンダパン、ペンギンパン、こねこパンといったわかりやすくて、かわいい動物系。パイナップルパン、ぶどうパン、みかんパンといった、フルーツ系。じどうしゃパン、ひこうきパン、ヘリコプターパンなどの乗り物系。中には、だいこんパン、のこぎりパン、なすパンといっためずらしいものまで。その一つひとつが、実に魅力的でおいしそうなのです。それぞれが特徴をとらえつつ、ふんわりとしていて、うっすらとした焦げ目がついていて…食欲をそそられるものばかり。「このパンはどんな味がするんだろう?」と想像をふくらませながら読んでみるのも、楽しそうですね。

 

初版の刊行は1973年。もう40年以上も前になりますが、共働き家庭での子育ては、今と変わらず大変だったようですね。また、森じゅうのからすがパンやさんに集まるという、この絵本のクライマックスシーンでは、チョコちゃんたちの友だちから、クチコミで評判が拡がっていきます。おいしいという感想がまたたく間にからすたちの会話で伝わっていく様子はまるで、SNS上での誰かの感想があっという間に広がり、新たな流行となる最近のバズマーケティングのようです。

少し余談になりますが、作者のかこさとしさんは、大きな影響を受け「『からすのパンやさん』を書くきっかけとなった芸術作品がある」とあとがきで打ち明けています。ロシアのモイセーエフ舞踊団が持つ演目のひとつ、組曲「パルチザン」。その芸術的な演出以上に、登場する兵士・農民・労働者・老若男女ひとり一人のきめ細やかな描写に心打たれたそうです。その上でかこさんは、モイセーエフから学んだことを活かし、からすの一羽一羽を描いた。からすたちの表情をもう一度見て笑ってほしいと記しています。

改めて作品を見ると、確かに一羽たりとも同じ容姿のからすはいないのです。絵本ですから、もちろん細かな描写はありませんが、かこさんは、もしかしたらセリフも名前もないからすを描くにも性格や生い立ちを想像しながら筆を入れていたのかもしれません。もしかしたら80種類以上のパン一つひとつにも、味や作り手の想いを込めていたのかもしれません。

そんな風に考えると、いろんなパンを見て楽しむだけでなく、また違った楽しみ方もできるのではないでしょうか。

 

 

 

偕成社「からすのパンやさん」 作・絵:かこさとし

 

からすのパンやさん

 

Text:セイヤ/ライター

高カロリーな美味い物と活字(特にシグマフォースシリーズをはじめとした歴史×アクション系)をこよなく愛す。最近は、娘に絵本を読んであげる日々。好きなパンはバターたっぷりのトースト。

 

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  1. ねこまるさん

    素敵な本ですね

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  2. 3035581さん

    子どもの頃読んで、自分の好きなパンを選んだりしました。懐かしいですね。大人の今も、パン屋さん行くとワクワクしますね。

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  3. 3032916さん

    2人の娘たちに、読み聞かせした本です!
    2人共パンが大好きで、次女とは一緒にパン教室へ通いました。

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  4. nomnomuさんさん

    子供とよく読んでいました。久しぶりにまた読んでみたくなりました。

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  5. 抹茶ロールパンさん

    私の憧れのパン屋さんの始まりは、この本でした。上手く焼けないこともあるのか、と渋い気持ちを知ったのも覚えています。またよみたくなっちゃった(^_^)

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  6. abo
    aboさん

    パンの絵本特集、素敵ですね!私もいつか子供ができたら大好きなパンにまつわる絵本を読み聞かせしてあげたいです^^

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  7. loving rabbitさん

    また読んでみたいですね♪

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  8. loving rabbitさん

    この絵本は知っています!

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  9. 3026547さん

    この本は子供の頃読んだことがあります。
    よく学校の図書室で借りたり、近所の
    図書館で借りたりしてました。
    とても懐かしいですね。
    また手にとってみたくなりました。

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  10. みーたろー
    みーたろーさん

    大好きな絵本です♡
    保育士をしていた時も給食にパンが出る時は必ず子どもたちに読んであげていました🍞📕

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  11. 3017757さん

    この「お話」大好きです♪
    沢山のパンが並んでいるページは圧巻♡こんなパン食べたいなぁなんて思いながら何度でも読みたくなる絵本です。

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  12. 神楽さん

    子供の頃、当時、近所には今のようにいろいろなパンを焼いて販売しているパン屋(今ではベーカリーですね。)がなかったので、この本のようにジャムパン、クリームパン、あんぱんなどがずらりと並んでいるお店は夢のようでした。

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  13. コロさん

    川崎市のかこさとしのひみつ展へ行ってきました。
    自分も、娘も好きなからすのパン屋さんだったのでなんとなくさみしいです。
    からすのパン屋さんのぱんをたべてみたかったでですね。

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  14. itimiさん

    子供のころ読みました。この絵本。懐かしいやら嬉しいやら。
    くいしん坊の私は何度も何度も繰り返し読んだ覚えがあります。
    でも結末はまったく覚えていないので絵を見て楽しんでいたのだと思います。

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  15. 120020さん

    かこさとしさんの懐かしい絵です。いいですね。

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  16. ごまあんぱんさん

    絵本の世界からずっと遠ざかっていました。
    この記事を見てまた触れて見たいなあと思いました。

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  17. クッキーさん

    この絵本をこどもに読んであげると読み終わった後に「パンが食べたい」と
    言っていたことを思い出しました。
    「パン作って」と言われたこともありました。
    読み聞かせている自分もパンを食べたくなったから無理もないかな。(笑)
    表紙を見て懐かしく思い出しました。

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  18. 3000197さん

    子どものお気に入りの本です。母親である私自身も、子どもの頃に大好きで読んでいました。もう少し子どもが大きくなたら、えほんを参考に色々なパンを作りしたいです。

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  19. しずさん

    「からすのぱんやさん」
    先日、孫たちが気に入って読んでいました。
    いろんな形のぱんに見入り、珍しいものをさがす競争をしていました。

    美味しそうなにおいがしてきそうな本でした。

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  20. 3001029さん

    昔、大好きな絵本でした‼
    この絵本の影響もあったと思うのですが、子供の頃は祖母と一緒にパン屋さんをするのが夢でした。
    とても懐かしくて、買って読みたくなりました!!

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  21. 3001027さん

    この絵本、保育園時代に読んでいました!
    確か、2巻も、出ていたような・・・。
    懐かしいなー。

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  22. 100076さん

    読んだことがありませんでした。
    本の中のパンの世界も楽しそうですね。

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  23. コスモスさん

    カラスがパンを作ると言う発想が面白いですね。
    読んでみたくなりました。

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  24. 120269さん

    懐かしいなあとタイトルを見て気持ちがタイムスリップしました。
    子供のころよく読んでいたなあ!
    今回の記事を見てまた読み返してみたくなりました。

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  25. ラディール
    ラディールさん

    あたしもこの絵本が大好きな少女でした。今思い返しても、親のありがたみであるとか、一緒に作る喜びであるとか、はたまたパンが本当に香ばしく美味しそうとか、簡単に思い返せます。本好きな家に育ち、たくさんの児童書を読みましたが、特別気に入っていますし、空気感が素敵です。もちろん、カラスの雛鳥たちが、超可愛い。

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  26. 畑娘
    畑娘さん

    持ってます!この本。私が子供の頃好きだった本でずっと手元に置いてあったので、娘たちにも読み聞かせで何度も読みました。いろんなパンが出てきて「私はジャムパンが好き」と親子でこの本を読んで話をしました。今でも大切になおしてあります。今度はいつか孫に読んであげたいと思っております。

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