【パン屋さんめぐり 第8回前編】ムール ア・ラ ムール@神奈川県伊勢原市

パン好きのみなさま、こんにちは!「Pascoスタッフがいく!全国のおいしいパン屋さんめぐり」。8回目となる今回は、神奈川県伊勢原市にある「ムール ア・ラ ムール」と神奈川県中郡大磯町にある「パンとチーズfumoto」の2店舗です!この2店舗、実は、あることでとてもつながりが深いお店。前編では「ムール ア・ラ ムール」をご紹介します!お店の紹介もさることながら、特にオーナーさんの想いや、パンづくりにかける意気込み、行っている取り組みなどについて聞いてみました。パンをめぐる壮大な物語、スタートです!

 

<今回の記事のポイント>

・「湘南小麦」「石臼製粉」の魅力

・オーナー・シェフの本杉さんのこだわりの原点

・各地で育てた小麦で、ご当地パンをつくる!?

 

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某グルメ人気サイトで5年連続1位の超人気店!

 

某グルメサイトのおいしいパン屋さんランキング 神奈川県エリアで、5年連続1位に輝く、伊勢原市のブーランジェリー「ムール ア・ラ ムール」。伊勢原駅から徒歩20分ほど。木をふんだんに使ったあたたかみのある外観で、とっても素敵な雰囲気のお店です。取材当日はあいにくの雨模様でしたが、さすが人気店だけあって、お客さまが次から次へといらっしゃいました。さて、どんなパンがあるのか…心を弾ませながら、さっそく店内へ。


ガラス張りの素敵な外観。お店の横(写真では左側)では地元のお野菜なども売られていました。

 

店内に入ると…、ふわっと心地のよい香りに包まれました。パンの芳ばしい香りのような、どこか懐かしいような…。ちょっと他のパン屋さんでは感じたことのないような香り。なんだろう?この香り…。こんな素敵な香りのパンはどんな味なんだろう?…と、はやる気持ちを抑えつつ、「ムール ア・ラ ムール」のオーナー・シェフであり、製粉所「ミルパワージャパン」の運営も行っている本杉正和さんにさっそくお話を聞いてみることにしました。


こちらが、「ムール ア・ラ ムール」のオーナー・シェフの本杉正和さん。

 

 

香りの正体は!?

 

−−− こんにちは!本日はお忙しい中、ありがとうございます。店内はとっても芳ばしい香りがしますね。でも、ちょっと他のパン屋さんとは違う香りがするような…気もします。

 

本杉さん:それはたぶん、うちのパンが100%国産小麦を使用していて、石臼で自家製粉しているからだと思います。石臼で挽いた小麦は、焼きあがったときの香りも、味わいも、ぜんぜん違うんですよ。

 

−−− そうなんですね!Pascoでも日本の食料自給率の向上に貢献したいという想いから、北海道の「ゆめちから」を中心とした国産小麦のパンを作っているんですが、「ムール ア・ラ ムール」ではどんな国産小麦を使っているんですか?

 

本杉さん:主に湘南小麦です。といっても・・・湘南小麦というのは、北海道の「ゆめちから」のように小麦の品種名ではありません。湘南小麦は、湘南地区で契約農家さんに大切に種から育てられた農林61号、ニシノカオリ、南部小麦の三品種を湘南小麦と呼びます。そして、この三品種を精麦や製粉前にブレンドして使っています。実は小麦のブレンドも僕がやっています。


本杉さんは収穫した麦粒を食べただけで、今年の出来がわかるそうです。

 

 

三種の小麦の良いところを引き出す湘南小麦

 

−−− 本杉さんが運営する製粉所「ミルパワージャパン」では、製粉するだけでなく、小麦のブレンドもしているんですね。なぜ、小麦をブレンドするんでしょうか?

 

本杉さん: 湘南地区で生産している小麦はとても小規模なので、小麦の質が毎年安定しているわけではないんです。それに、小規模とか、大規模とか、規模に関係なく、農作物なので、毎年たんぱく含量も変わりますし、味や質そのものが変わってしまいます。毎年収穫する小麦の質を見極めて、三種の小麦の配合を少しずつ変えているんです。そして、毎年、僕がイメージする「食べた時に一番おいしいと感じる小麦粉」のバランスを保っています。

 

−−− 奥が深いですね。本杉さんが考える、人が食べた時に一番おいしいと感じる小麦のバランスとはいったいどんなイメージなんですか?

 

本杉さん:そうですね…。食べた瞬間に味わいがあって、噛んでいくうちにまたちょっとずつ別の味わいがでてきて、飲み込んだ後もまた余韻が続く…そんなイメージです。もっと簡単に言うと、三種の小麦の良いところを引き出して、パンを食べている最中ずっと「おいしい」を保てるように小麦をブレンドしています。


これは石臼製粉した湘南小麦を使っているパン屋さんの証です。

 

 

湘南小麦、石臼製粉の魅力

 


湘南小麦は湘南地区で契約栽培した小麦を低温で管理し、丁寧に精麦・石臼製粉した小麦の総称です。

 

−−−  お話を聞いていたら、ますます「ムール ア・ラ ムール」さんのパンが食べたくなってしまいました(笑)。湘南小麦は、どんな特長があるんですか?すごく気になります。

 

本杉さん:香り、味わいが長く続き、余韻が残るというのは、湘南小麦の1つのアピールポイントですね。それに、湘南小麦にブレンドされている三品種は、それぞれ若干味わいが違うんです。人の味覚は優れているので、実は少し味の差があるだけで、飽きずにずっと食べられるんです。そこも魅力の1つだと思います。ただし、湘南小麦の香り、味わいを最大限活かすためには、石臼製粉でなければダメですね。

 

−−− 石臼挽きにこだわられているんですね。石臼で挽くと、どう変わりますか?

 

本杉さん:小麦は熱に弱く、鉄のロールで挽くと摩擦熱で麦粒が温まってしまいます。そうすると、小麦本来の香りがとんでしまうんです。小麦本来の味わいや香りを活かすためにも、熱が発生しにくい石臼で小麦をゆっくり挽くことが大切なんです。


おいしそうなパンが。試食が楽しみです(感想はのちほど・・・)。

 

 

湘南小麦への想い

 

−−− 本杉さんが、湘南小麦と出会ったきっかけは何ですか?

 

本杉さん:「ブノワトン」というパン屋さんです。僕が高校時代に、お店に入った瞬間にパンの香りに魅了され、後に製パンの修業も積んだお店です。実は…、湘南小麦は、ブノワトンのオーナーでもある高橋シェフの「地元、神奈川で小麦を育てて、パンを焼きたい!」「廃業危機になっていた湘南エリアの小麦畑、農家さんをなんとかしたい」という想いから始まったんです。

 

−−− 想いから始まった…ということは、湘南小麦を作ったのはブノワトンの高橋シェフだったんですか?

 

本杉さん:何の品種をどのようにブレンドするか考えたのは、ブノワトンの高橋シェフですね。そもそも、高橋シェフが「湘南小麦プロジェクト」を立ち上げ、契約してくれる地元の農家さんを探して、2007年に製粉所「ミルパワージャパン」を立ち上げたんです。しかし、プロジェクトがこれから…という時に高橋シェフが他界してしまいました。そこで、僕がその想いを引き継いだんです。


店内にはこんな黒板が飾られています。

 

−−− ミルパワージャパンも、ブノワトンの高橋シェフが立ち上げたものだったんですね。

 

本杉さん:そうです。ブノワトンは閉店してしまいましたが、一緒に修業を積んだ妻と共に、ブノワトンの跡地に“石臼で粉を挽く”という意味の「ムール ア・ラ ムール」をオープンさせました。とにかく高橋シェフの想いを引き継ぎたい、湘南プロジェクトは終わらせてはいけない…という一心で、僕がミルパワージャパンを引き継いだんです。当時、ミルパワージャパンの設計から携わった僕しか、引き継げる人はいない…という気持ちでした。


最初にブノワトンの扉をあけた時に対応してくれたスタッフが、奥様の夏子さん(右)だったそうです。

 

 

湘南小麦プロジェクトは今・・・

 

−−− 現在、湘南小麦プロジェクトはどうなっているんですか?

 

本杉さん:まだまだ、これからですが、結構スケールは大きくなっていますよ。湘南小麦プロジェクトのスタート時には2軒だった契約農家さんも今は5軒になりました。この取り組みをきっかけに、小麦栽培を始めた人もいます。湘南小麦を使いたい!と言ってくださる方も出てきました。現在、都内や神奈川のベーカリーやレストランで使っていただいています。

 

−−− すごいですね。どうやって湘南小麦が広がったんですか?

 

本杉さん:「麦踏み塾」の影響が大きいですね。麦踏み塾は、「パンとチーズfumoto」の青沼さんが、塾長なんです。


麦踏み塾の様子。雑草を抜いたり、お手入れもきちんと行います。

 

−−− 後半でご紹介する「パンとチーズfumoto」の青沼さんですね?

 

本杉さん:そうです、僕も麦踏み塾の代表としてイベントに参加していますが、はじめた頃は伊勢原の子ども向けの食育イベントだったんです。今では大人の方も多く参加され、湘南小麦の魅力を多くの方に知っていただくイベントへと変わりましたし、パン好きの方やプロのパン屋さんなどが集うイベントにもなっています。


左の方が「パンとチーズfumoto」のオーナー青沼さん。

 

 

本杉さんの原動力とは?

 

−−− ベーカリー、製粉所、湘南小麦を広めるイベント…とかなりお忙しそうですが、本杉さんを動かす原動力とは何ですか?

 

本杉さん:もともとは、自分でパン屋をやることを夢見て突き進んできましたが、ブノワトンの高橋シェフに出会った頃から徐々に変わってきましたね。それに自分のお店を持つ夢は叶いましたし、今の僕の目標は「日本の農業の活性化」です。その目標がすべての原動力になっていますね。そのためにも地産地消を推進するご当地パンを広めていきたいんです。

 

−−− 地産地消を推進するご当地パン…。素敵ですね。まさに「ムール ア・ラ ムール」さんが実現していることですよね?

 

本杉さん:そうですね。ブノワトンの高橋シェフが思い描いていたように「地元の小麦を使ってパンを作りたい」というベーカリーも実は多いと感じています。そういう意味では「ミルパワージャパン」と「ムール ア・ラ ムール」がいいお手本にならないと…。そのためにも、もっとおいしいパンを提供し続けなければと思っています。

 

−−− そうなんですね。地産地消の魅力とは、なんですか?

 

本杉さん:「その土地でしか食べられないパン」ってことですかね。たとえば、地方のお蕎麦屋さんなんかに行くと、店の手前の小屋でそば粉を石臼で挽いて、挽き立て、打ち立て、ゆで立てが味わえたりするじゃないですか。まさにそこでしか食べられない蕎麦ですよね。だからこそ魅力があり、価値があると思うんです。

 

−−− たしかに、おいしいものを、ご当地で食べるとさらにおいしく感じたりしますよね。

 

本杉さん:ですよね。自然の景色が最高の場所ならさらにおいしく感じたりして…。その土地でしか食べられない「ご当地パン」があって、ご当地パン目的に旅行先を決める…というのもいいじゃないですかね。

 

 

国産小麦100%の「ムール ア・ラ ムール」のパンをいただきます!

 

奥様にオススメのパンを聞いてみました・・・。

 

<田舎あんぱん>

湘南小麦のふすま(小麦の外皮)を使った芳ばしいあんぱん。中は粒あん。

一般的なあんぱんより表面をよく焼いているので、ふすまの芳ばしい香りが口の中に広がります!

生地はもっちもち。粒あんの甘さと小麦の芳ばしさがたまりません。

 

 

<フレンチトースト ~シナモン味~>

シナモンシュガーで包まれた真っ黒なフレンチトースト。

お客さまの間では、「黒いフレンチトースト」と呼ばれているそうです。

カラメルがしっかりついているので、外はカリッ、中はサクッサクッ。

 

 

<プレーンベーグル>

やわらかくって、もっちもち。中はわりとしっとりめです。

シンプルな味わいだけに、国産小麦のやわらかい風味がよくわかります。

 

 

<山梨県産ゆめかおりのカンパーニュ>

山梨県で作られた小麦「ゆめかおり」をミルパワージャパンで丁寧に製粉して

カンパーニュとして焼き上げたもの。湘南小麦よりしっとり感を感じました。

食べた後、しばらく小麦の余韻が残りました!

少し濃い味のシチューと食べてもパンの香りや良さが負けない!そんな味でした!

 

・・・今回はここまで。

さて、この記事を読んで「湘南小麦のパンが気になる!」「おいしいパンが食べたくなった!」と思ったみなさまに、うれしいおいしいお知らせが!
なんと今度、そごう横浜店でご当地小麦パン祭りが開催されます!
このイベントは、後編でご紹介予定の「パンとチーズ fumoto」の青沼さんが企画。
え?あんな有名店が!?知る人ぞ知るあの名店が!?と思わずびっくりしてしまうようなお店も。
湘南小麦を使っているパン屋さんが多く出展されるイベントになるそうです。

もちろん、今回インタビューした「ムール ア・ラ ムール」さんも出店されます!

 

★ご当地小麦パン祭り★
日時/10月31日(水)~11月5日(月)
場所/そごう横浜店8F「パンフェス」内「ご当地小麦パン祭り」コーナー
各県の小麦を食べ比べながら、国産小麦を応援するイベントが開催されます。数あるパン祭りの中、ご当地小麦を使用したパンを集めた販売会は珍しいそうなので、ぜひ行ってみてくださいね!
※詳細はコチラ
※そごう横浜店のページはコチラ

 

\第8回の後編は、「パンとチーズfumoto」青沼さんのインタビューをお届けします/

「パンとチーズfumoto」は湘南小麦を使っているパン屋さんで、オーナーの青沼さんは「麦踏み塾」の塾長でもあります。

お楽しみに!

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ムール ア・ラ ムール

住所:神奈川県伊勢原市板戸645-5
(Google Mapはコチラ
Tel: 0463-57-3085(予約可能)
営業時間:(金~月曜日)10:00~15:00
駐車場:5台
(2018年9月29日現在)

 

※ミルパワージャパンについて詳しく知りたい方はコチラ
※ミルパワージャパンのFacebookはコチラ
※麦踏み塾について詳しく知りたい方はコチラ

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  1. ゴンさん

    全国にご当地小麦を使ったベーカリーが出来たらいいな。

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  2. でいじ
    でいじさん

    パンにとって粉は大切な存在。粉一つだけで、パンの味わいや風味、食感も全然違いますよね。
    国産小麦にこだわっている点で好印象です。

    更に湘南小麦プロジェクトとても気になりました。
    素敵なプロジェクト。

    どんな味わいになるのか?
    商品化した時にはぜひぜひ食べてみたいです。

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  3. おくさまさん

    ブノワトンの時からずーっと通っています。
    噛み切るときの感触?触感?がとても気持ち良く、定期的に食べたくなるパンです。
    でもお昼過ぎに行くとほぼ売り切れで…(T-T)
    あー、思い出したら食べたくなってきた!

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  4. 110457さん

    湘南小麦のパン🍞の香りが漂ってきそうです😋大阪市から遠いけど、百貨店のパン祭りなどでいただく機会があれば是非行ってみたいです。

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  5. おにゃんさん

    小麦粉にこだわっているんですね。食育イベントに参加した人達はずっと覚えていてずっとファンでいるのでしょう。食べてみたいですね。後編も楽しみです

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  6. 風鈴さん

    その時に最適なブレンドまでしてるなんてすごいこだわりですね。
    食べてみたいです。

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  7. 120324さん

    パンフェス行っていろいろ食べ比べしてみたいー

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  8. 水ようかんさん

    それぞれの場所でそれぞれの小麦粉を使ったパンができると最高ですね。

    どのパンも力強さを感じました。

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  9. プリンさん

    湘南小麦しらなかった 
    食べてみたいですがちょと遠い。残念

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  10. 珈琲豆
    珈琲豆さん

    近くにあったらいいな~香りだけでもお腹いっぱいになれそうです。
    イベントは簡単に人が集まりそうな場所なんですね・・・

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  11. カネゴンさん

    出身地が近いので、ブノワトンには良く買いに行ってました。
    私が引っ越しした為、ムールアラムールさんに変わられてからはパンを食べたことはないのですが、機会があれば是非立ち寄ってみたいです。

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  12. コスモスさん

    もう~、パスコさん!紹介してほしくなかったなぁ~(泣)(←冗談です)
    これ以上有名になったら、大変(T_T)
    ここのパンはほんと美味しいです。
    ハード系の食事パンが豊富なのが嬉しい。
    どのパンも美味しそうで選ぶに悩むけど
    結局、気になったのはどんどん買って量が凄い事になります(笑)
    もし、車でお店に行かれる方は開店前に行くのをおススメします。
    月曜日に行きましたが、凄い人で駐車場には警備員さんがいました。
    そごうさんのイベントも行ってみようかな?♪

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  13. はんなさん

    思いが込められている感じが伝わってきます!

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