【パンと本 第1回】「パンとスープとネコ日和」群ようこ

 

パンとコーヒーが揃ったら、自分だけの特別な時間のはじまりです。さらにそこにお気に入りの「本」があれば、その時間はもっと素敵なものになるはず……。あなたのパン時間を豊かにしてくれる、“おいしい本”をご紹介します。

 

 

 

ジリジリと強い日差しに、すっかり真夏の到来を感じる季節になりましたね。こんな暑い日には、涼しいお部屋でお気に入りのパンとコーヒーを片手に読書でもしてみませんか? おうちでゆっくり過ごしたい休日、「久しぶりに時間に追われる毎日から抜け出して心静かに本を読みたいな……」と思ったときにおすすめしたいのが、群ようこさんの「パンとスープとネコ日和」。まずは、あらすじからご紹介しますね。

 

出版社で編集者として働いていた50歳のアキコは、ある日、唯一の身内である母親を突然亡くします。残ったのは、母が切り盛りしていた昭和風情の大衆食堂だけ。そんなとき、会社で理不尽な異動があり、退職をきっかけに調理師免許を取って母の食堂を継ぐことにしました。そして開店して間もないある日、店の横の隙間でうずくまっていたネコ「たろ」を見つけ、飼うことに。こうして新しい家族と、新しい人生が動き出したのです。

 

食堂のメニューは、2種類のサンドイッチとスープと小さなフルーツのみ。しかし、こだわりの食材や、修道院のようなシンプルな店の雰囲気が時代にマッチしたようで店は大繁盛。アキコはたった一人の従業員・しまちゃんと毎日忙しくもやりがいのある日々を過ごしていきます。そんな充実しているかのように見える日常の一方で、顔も知らない父親のことや店のコンセプトに対する迷いに頭を悩ませる一面も。さらにネコのたろに異変も起こり……。

 

タイトルに「パン」とありますが、実はこの本、パンの出番はそれほど多くありません。しかし、パンの存在がなければ成り立たない本でもあるのです。ここではパンを始めとする食べ物や、道に咲く季節の花、身近な人との何気ない会話といった、私たちの暮らしに当たり前にある存在に丁寧に向き合うことこそが、人生を豊かにするコツなのだと教えてくれます。

 

特においしそうなのは、アキコが開店前の朝食に食べるというサンドイッチ。仕入れてきたパンを焼いて、卵とレタスを挟んだだけのシンプルなものですが、「毎日食べても飽きない味がある」というのは、丁寧に暮らしを営んでいる証。さらには自分がブレずに生きていくための軸にもなり得るような気がするのです。

 

衝撃の展開や大きな事件は起こらないけれど、読んだ後は「明日からもまた頑張ろう!」と元気になれる、そんな心温まる本です。本を通してアキコの日常に寄り添ってみてはいかがでしょうか。

 

角川春樹事務所 「パンとスープとネコ日和」群ようこ

http://www.kadokawaharuki.co.jp/book/detail/detail.php?no=4572

 

 

Text:大西マリコ/ライター パンと本とミルクティーが好きなライター。新しいまちを訪れる際は、事前に好みのパン屋を調べて立ち寄る。好きなパンはカレーパンと、フルーツの入ったハードパン。

 

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  1. ねこまるさん

    素敵な本ですね

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  2. にのみ
    にのみさん

    大好きな本です!
    毎日を丁寧にしっかり生きていこうと思えます。

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  3. loving rabbitさん

    知っていました!

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  4. mipoko
    mipokoさん

    『パンとスープとネコ日和』のサンドイッチレシピを調べていたら、この記事に巡り合いました。本の内容もパンランチのお供にぴったりな一冊ですね。今後のパンと本の連載も楽しみにしています。

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  5. 3017757さん

    群ようこさんは大好きな作家さんです(^_^)猫が出てくる群さんらしいお話ですね。つい主人公と自分を重ねてしまいます。シンプルなサンドイッチの朝食なんて思いっきり共感してしまいますから。

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  6. 110553さん

    このお話、本は読んでいないのですが テレビで小林聡美さんのやっているドラマの方を見て私も玉子サンドが作りたくなり 今では私の定番にもなっています。シマちゃんとの掛け合いや ご近所さんとの付き合い方など 見ててほっこりできます。「パンとスープと猫日和」とても好きな作品です。

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