【パン屋さんめぐり 第8回後編】パンとチーズfumoto@神奈川県中郡大磯町

パン好きのみなさま、こんにちは!「Pascoスタッフがいく!全国のおいしいパン屋さんめぐり」、8回目の後編です。前編では「ムール ア・ラ ムール」のオーナー・シェフであり、製粉所「ミルパワージャパン」を運営する本杉さんにインタビューしました。

 

今回は、ミルパワージャパンで製粉した湘南小麦を含む、神奈川県産の小麦でパンをつくっている「パンとチーズfumoto」をご紹介!ご主人が小麦を自家栽培し、奥様がパンづくりを担当されている大磯のパン屋さんです。お話を伺うご主人の青沼さんは、前編でもご紹介した本杉さんと一緒に伊勢原で立ち上げた「麦踏み塾」の塾長や、ミルパワージャパンの顧問も務めていらっしゃいます。湘南小麦に関する活動から「パンとチーズfumoto」のこだわりまで、様々なお話を伺いました。

 

>>前編(「ムール ア・ラ ムール」編)を読む方はコチラ

 

<今回の記事のポイント>

・製粉所「ミルパワージャパン」の本杉さんとの出会い

・フランスのように、ご当地小麦や食材を味わえるパン屋さんを全国各地に!

・自家栽培した小麦と、パンにピッタリのチーズ

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地元の方から愛されるベーカリー

 


お店は閑静な住宅街にあります。ウッドデッキが目印です。

 

大磯駅から徒歩約14分。おしゃれなお宅が立ち並ぶ閑静な住宅街にひっそりとたたずむ「パンとチーズfumoto」。お店は階段を上った2階にあります。山の麓にあるお店ということで、「fumoto」と店名をつけられたそうです。

 

 

店内に入ると、焼き立てのパンの香り・・・

 

取材当日は、オープン前のお店に伺いました。続々と焼き上がるパンを陳列する奥様。オーブンでは今、お店の人気看板商品「fumoto バゲット」が焼かれているようで、ふんわりやさしい小麦の香りが店内を包み込んでいます。レジの横のショーケースには見たことのないようなチーズも。


店内には焼き上がったパンが続々と・・・。

 

−−− こんにちは!本日はお忙しい中、ありがとうございます。ちょうど今、パンが続々と焼き上がっているようですね。「fumoto」さんでも、湘南小麦を使用していると本杉さんに伺いました。

 

青沼さん:湘南小麦をはじめ、大磯にあるコミュニティファーム「fumotoファーム」で栽培した小麦や、神奈川県立中央農業高校の生徒が育てた小麦など、神奈川県産の小麦と北海道産の小麦をバランスよく組み合わせて使っています。

 

 

「パンとチーズfumoto」をオープンしたきっかけ

 

−−− さきほど「fumotoファーム」で栽培した小麦も使っているとおっしゃいましたが、青沼さん自身も小麦を栽培されているんですか?

 

青沼さん:そうなんです。自分の畑でとれた小麦で、製パンの修業を積んだ妻がパンを焼く…。そんな6次産業をやりたいという想いをカタチにするために、農業とパン屋さんを始めたんです。


「パンとチーズfumoto」青沼さん(左)と、奥様(右)。

 

−−− 農業を始めた…ということは、もとから農家さんというわけではなかったんですか?

 

青沼さん:僕はもともと広告代理店で働いていたんです。東京農業大学出身ということもあり、もっと土に近いところで仕事がしたいと思い、脱サラをして農業を始めました。それと同時に、食育イベントなどを通じて食に興味を持ってもらおうと食育活動を行う「食育アカデミー」も立ち上げました。全然違う世界へと足を踏み入れましたが、毎日充実しています。

 

−−− 何も知らないところから、国産小麦、しかも、自家栽培した小麦を使うとなれば、かなりご苦労されたんじゃないですか?本杉さんの取材でも感じたんですが、特に製粉は奥が深く、難しいな・・・と。

 

青沼さん:そうですね。小麦畑をつくって、小麦を栽培・収穫、そして製粉しようとしても、この辺りには製粉所がなかったのです。そしてようやく見つけた製粉を行っているところにお願いをして、それでパンを焼いてみましたが、理想の味が作れなくて。2ヶ所ほどお願いしましたが、なかなかおいしいパンが焼ける小麦にならず、苦労しました。そして3年目にやっと「ミルパワージャパン」の本杉さんと出会いました!ようやく納得のいく小麦粉ができましたね。

 

 

本杉さんとの出会い

 

−−− 本杉さんと運命的な出会いをしたわけですね。

 

青沼さん:そうですね。たしかに、運命的な出会いだったかもしれません。本杉さんが製粉した小麦で初めてパンを作ったとき、これまでのものとは全然違いました。何でこんなに製粉でパンの味が変わるの?と、とにかく衝撃を受けたのを覚えています。本杉さんと色々話をするうちに意気投合し、「食育アカデミー」の一環で行いたいと考えていた「麦踏み塾」を、伊勢原で一緒に始めようという話になったんです。

 

−−− そういった経緯で本杉さんと共に「麦踏み塾」の活動をされているんですね。

 

青沼さん:そうです。まずは子供たちに小麦畑で麦踏みを体験してもらい 「麦は踏まれれば踏まれるほど強くなる、人も同じ強く生きよう!」そんなことを教えたくて始めたんです。ところが徐々に大人の参加者たちが増えていき、気づけば小麦の90%が輸入されていることや、実は神奈川でも小麦が栽培されていて湘南小麦と言うご当地小麦が挽かれていることを発信する場になっていったんです。

 


「麦踏み塾」では、麦刈り体験など、食育イベントがたくさん開催されてます。

 


「ムール ア・ラ ムール」の本杉さん(左)、「パンとチーズfumoto」の青沼さん(右)。

 

−−− イベントなどを通じて、湘南小麦を使うパン屋さんは増えたそうですが・・・。

 

青沼さん:湘南小麦を使用しているパン屋さんは、現在30店舗ほどです。実は、みなさんもよく知っている有名店もあるかもしれませんよ(詳細はHPに掲載しています)。

 

−−− すごく多いですね!都内のパン屋さんでも使われていたり、湘南という枠を超えていますね。

 

青沼さん:はい。でももう、あまり湘南小麦を納品する店舗は増やせないんです。湘南小麦を作る上で必要不可欠なミルパワージャパンは、もともとは「ムール ア・ラ ムール」のための製粉所・製粉ラボだったので、設備的にもマンパワー的にも現段階では製粉できる量には限りがあるんです。

 

 

次は「1エーカー for 1ベーカリー」

 

−−− 湘南小麦を製粉できる量に限界がきているということですか?

 

青沼さん:現時点ではそうですね。人や設備を整えないと・・・。そのために麦踏み塾は、湘南小麦の魅力を知ってもらう取り組みから、お店で使う小麦を自ら作るか、地域の農家さんに作ってもらう「1(ワン)エーカー for 1(ワン)ベーカリー」という取り組みへと変わっていきました。2007年からスタートした湘南小麦のプロジェクトが、2017年で10年目を迎えたということもあり、本杉さんをはじめ関わってきた人たちの中でも、次のステージに行こうという強い気持ちもありましたね。(※1エーカー・・・面積の単位)

 

−−− 「1(ワン)エーカー for 1(ワン)ベーカリー」ですか?1エーカーの畑で、1つのパン屋さんが使用する小麦分をまかなう、ということですか?

 

青沼さん:簡単にいうとそんな感じですが、100%地元産の小麦でパンを作りましょう、というわけではありません。いつも使っている小麦に、少しでも地元で育った小麦をブレンドして、パンにしましょう!という取り組みです。地元のパンで「街の名物・名産」を作っていけたら、農業、製粉所、パン屋さん、そして地域も活性化していきます。それを実現している「湘南小麦」は良いモデルケースになると思うんです。

 

−−− 湘南小麦のように、各地域の〇〇小麦を増やしていく、ということですか?たしかに各地にご当地小麦を使った街の名物パンが生まれて、小麦の生産が増え、各地域に「パンの街」というのができたら最高ですね。

 

青沼さん:実際、本杉さんが三種類の小麦を厳密に同じように焼いてパンを食べ比べる「三麦三様」というイベントをやっているんですが、かなりの反響がありました。申し込みが殺到するので、今では抽選にしているほどです。でもそれは、みなさんが小麦それぞれのパンの味わい、香りに興味があるということだと思うんです。

−−− パン好きの方は年々増えているので、興味を持たれている方が多いのかもしれませんね。

 

青沼さん:僕も麦踏み塾のイベントを通じて、パンに興味・関心がある方が増えていると実感しています。それに、僕のように自分の作った小麦や地元の小麦を使ってパンを焼いてみたいパン屋さん、そしてうちの地域の小麦も製粉してほしいというパン屋さんや農家さんも、たくさんいるんですよ。実際、湘南小麦の評判を聞きつけ、全国各地のパン屋さんや農家さんから相談が数多く来ています。

 

−−− 実はPascoも本社の屋上で「ゆめちから」の小麦を栽培しているんですよ。といっても、商品に使っている「ゆめちから」は北海道で栽培されたものですが、自分たちの手で育てることで生産者さんたちと想いを共有したい、という想いから、屋上で栽培を始めたんです。小麦を育てるって大変ですね。

 

青沼さん:そうですね。でも今は、品種改良のおかげで北海道以外の国内各地でパン用の小麦を作れるようになりました。実際、神奈川県で作られている小麦はパリ近郊でフランスパン用に育てられている品種と同じ中力粉タイプです。ハード系のパンには適しています。北海道以外の日本各地で、ちゃんと製パンに適した小麦は作れるんですよ。

 

−−− ということは、「1(ワン)エーカー for 1(ワン)ベーカリー」が実現し、日本各地でご当地パンが生まれる日も遠い未来ではないということですか?

 

青沼さん:もちろんです!しかし課題もあります。やはり自分で小麦畑を作って収穫するには農機具が、製粉するにはミルパワージャパンのような設備と技術も必要です。そして何よりも日本の小麦を使っておいしいパンをつくるためには、外麦(外国から輸入した小麦)とはまた違う製パン技術も必要です。


店内にある石臼。実際は電動の石臼で挽くが、こちらは子どもたちに小麦粉の作り方を教えるために展示。

 

−−− 国内産、その土地ならではの小麦の香りや風味を活かすことを、大切にされているんですよね。

 

青沼さん:ええ、そうです。「1(ワン)エーカー for 1(ワン)ベーカリー」を推進していくためには、小麦を栽培するための農業指導や製粉指導なども同時並行しなければならないんです。ミルパワージャパンでは、石臼で小麦を製粉する技術を学ぶ「石臼道場」を開催しているんですよ。でも技術の習得には時間がかかりますから、今は1軒のパン屋さんに1つの小麦農家さんが味方になれるよう、農家とパン屋のマッチングにも力をいれています。

 

 

青沼さんの原動力とは・・・

 

−−− 本当にさまざまな視点から、ご当地小麦パンの普及に力をいれているんですね。青沼さんの原動力とは何ですか?

 

青沼さん:日本の農業の活性化ですね。先程も少し話がでましたが、かつて国産小麦はたんぱく量が低く、パン用には適さなかったんです。なので、その多くはうどん用に使われていたんです。1980年代から品種改良が進み、今ではパン用の強力タイプの小麦が全国でも栽培できるようになったんです。それでも約90%は外麦に頼っています。

 

−−− 先日お話を伺った、本杉さんも同じようなお話をされていました。

 

青沼さん:日本の農業を活性化したいというのは、本杉さんと僕を結びつけている共通の想いです。それに、ご当地の小麦にご当地の小豆でつくった手作りあんこ、手作りクリーム・・・一つずつ丁寧に手間暇をかけて作ったパンは、本当においしい。その価値をみんなにわかってほしいと思うんです。その想いも一緒ですね。

 

−−− ご当地の小麦に、あんこに、クリームですか?

 

青沼さん:山梨で山梨県産の小麦100%で、ご当地の野菜・果物、大豆などを使って製パンをしている「自家栽培麦工房ナチュ」というパン屋さんもあるんですよ。そんな、パン屋さんにもっともっと光があたるようにして、みんなに知っていただきたいですね。

 

 

季節ごとに取り寄せているチーズ

 

−−− 店名にも「パンとチーズfumoto」とあるように、チーズにもこだわられていらっしゃるんですよね?


ショーケースの中にもチーズがたくさん並んでいます。

 

青沼さん:季節に合わせたチーズをそろえています。国産のものは直接仕入れているものもあり、ヨーロッパ系のチーズは神楽坂の「アルパージュ」というお店から仕入れていますね。チーズの選定は、チーズの資格「CAPチーズプロフェッショナル」を持っている妻がやっています。今日は、めずらしい八丈島のモッツァレラが入ってきていますね。妻がお客さまにチーズの紹介やパンとチーズの食べ合わせのアドバイスをしながら販売しているんです。


あまり見たことがない、めずらしいチーズも。一番奥のモッツァレラが八丈島のチーズです。

 

−−− 食べ方のアドバイスまでしているんですね。それは、きっとパン好きの方にはたまらないと思います。先程もパンを買いに来られたお客さまがチーズも買われていて・・・家の近くに「パンとチーズ fumoto」さんがあったらいいなと思います。

 

 

最後に「パンとチーズfumoto」のパンをいただきます!

 

 

 

<フォカッチャ フロマージュ>

チーズを細かくシュレッドして、ガーリックオイルを塗って焼いたフォカッチャ。フランスの「コンテ」というナチュラルチーズが使われています。チーズの味が濃いですが、それに負けない小麦の味わい。小麦の甘みを感じます。ガーリックがほのかに香るので、飽きずに食べることができました!きっとワインに合いますね。

 

 

<無花果とクリームチーズ>

セミドライ無花果(いちじく)とクリームチーズが多く使われている人気パン。かめばかむほど、クリームチーズ、無花果、そしてモチモチ生地のおいしさが口いっぱいにひろがります。シナモンが無花果とチーズの香りを高め、いいアクセントに。

 

 

<fumoto バゲット>

小麦のおいしさをシンプルに感じることができる「fumoto バゲット」。レーズンから作る自家製酵母が、小麦の良さを引き出しているそうです。小麦の香りが口の中に広がり、飲み込んだ後も口の中に小麦の香りが・・・・食べ終わったあとも余韻が楽しめます。外はバリっバリっと食感も最高!中は湘南小麦の特長でもある、モチモチっとした生地。噛むたびに旨味が溢れてきます。青沼さんおすすめのオリーブオイルにもぴったり!

 

 

フレッシュなオリーブの実を食べているようなオリーブオイルでした。

 

<スタッフの感想>

「ムール ア・ラ ムール」の本杉さんも「パンとチーズfumoto」の青沼さんも、パンを通じて「日本の農業を活性化したい」という熱い想いを胸に活動されていました。その熱さに心を動かされ、どんどん仲間が増えているようです。日本各地に街の名物パン・ご当地小麦パンができて、各地域に「パンの街」というのができる日も近いかもしれませんね。

 

\前編では「ムール ア・ラ ムール」本杉さんのインタビューをお届けしています/

>>前編(「ムール ア・ラ ムール」編)を読む方はコチラ

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パンとチーズfumoto

住所:神奈川県中郡大磯町西小磯789−13
(Google Mapはコチラ
Tel: 0463-79-8100
営業時間:(木曜日・土曜日)12:00〜16:00
駐車場あり(お店から少し距離があります)
(2018年9月29日現在)

 

<湘南小麦プロジェクトに参加されたい方は>
「麦踏み塾」の活動をお手伝いしたい!興味がある方は、サポーターさんを募集しているときもあるので要チェック!
詳細はコチラをごらんください。

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※1(ワン)エーカー for 1(ワン)ベーカリーについてはコチラ
※石臼道場についてはコチラ
(プロ向け非公開ですが、興味があれば入会申請してください)

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  1. おにゃんさん

    最近は地元産とスーパーでも売っていますがだんだん田畑がなくなっていくので淋しいです。もっと農業を始める、続けられる制度があれば頑張ってやろうと思う人も増えるかも知れないですね。

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  2. 風鈴さん

    すべてにこだわりぬいている感じがします。

    1
  3. 120083さん

    食べてみたい!

    1
  4. コスモスさん

    機会があれば食べてみたいです。

    2
  5. みみみみみさん

    こだわりの小麦で作ったパンをいただいてみたいです。
    八丈島のモッツアレラも食べてみたいです。

    1