【パンと本 第3回】「しあわせのパン」三島有紀子

パンとコーヒーが揃ったら、自分だけの特別な時間のはじまりです。さらにそこにお気に入りの「本」があれば、その時間はもっと素敵なものになるはず……。あなたのパン時間を豊かにしてくれる、“おいしい本”をご紹介している「パンと本」。今年も残すところ、あと1ヶ月ちょっと。年の瀬が迫ってくるとつい慌ただしくなりがちですが、よい年を迎えるためにも今が頑張りどき!という人も多いのではないでしょうか?第3回は、気分をリフレッシュできる、癒しのパン本をご紹介。これを読めば、年末までにもうひと踏ん張りできること間違いなしです!

 

 

 

今回、ご紹介するのは、ポプラ文庫「しあわせのパン」(三島有紀子著)です。まずは、あらすじを少しだけご紹介。お話の舞台は、北海道・洞爺湖のほとりにある小さな町・月浦。湖が見渡せる丘の上でパンカフェ「マーニ」を営むのは、東京から北海道に移住してきた夫婦、りえさんと水縞くんです。

 

水縞くんの焼いたパンと、りえさんのコーヒーが主役のカフェ「マーニ」には、日々さまざまなお客さまが訪れます。毎日やってくる常連さんたちを始め、失恋して傷心のカオリ、両親の離婚に心を閉ざした少女とその父、新婚旅行の地に再び訪れた老夫婦など。それぞれが、さまざまな想いを抱きながらも、二人が作るパンとコーヒーに背中を押してもらい、前に一歩踏み出すことができる。そんな“心の拠り所”として愛されているカフェ「マーニ」を中心に繰り広げられる人間物語です。

 

タイトルとあらすじからも伝わってくるように、この本を語るうえで欠かせないのは、パンの存在。二日酔いの翌日にはバターをのせたシンプルなライ麦パン、誕生日には斜めにうねった蛇の目模様が入った、大きくて特別感のあるクグロフ、冷え切った体にはうぐいす豆のやさしい白パン……と、物語のなかでパンが「マーニ」を訪れる人たちの心と体に寄り添う役割を果たしているのです。

 

なかでも最も印象的なパンは、フランスパンの一種・カンパーニュ。カンパーニュの語源は「カンパニオ」という言葉で、「パンを分け合う人たち」のことをこう呼ぶそうです。そしてそこには、“仲間”という意味が込められているんだとか。一つのパンを分け合うことで、パンだけでなく気持ちもシェアしていることに気付いた人が付けた名前なのでしょうか。いずれにしても、素敵な意味ですよね♪

 

この、カンパーニュの語源について教えてくれたのは、パン作りの名手・水縞くん。訳あって新婚旅行の地を訪れ、しばらく泊まることになった老夫婦の夫に対し、唐突にこの話をした水縞くんですが、これは彼のためだけにした話ではなく、おそらく「マーニ」に来る人たち全てに対して伝えたい、水縞くんの気持ちなのではないかと思いました。「マーニ」を訪れる人々=仲間。当然、仲間に対して作るパンや料理、コーヒーはきっと愛情たっぷりで温かみに溢れているはずですよね。「マーニ」が多くの人を癒し、元気にする秘密は、そんなところにあるのかもしれませんね。

 

この本を読んだらますますパンが好きになり、そしてパンを分け合いたい相手のことをきっと思い浮かべてしまうはず……。年の瀬を前に、パンを通して、改めて“自分なりのしあわせ”について考えてみるのも良いのではないでしょうか。

 

ポプラ文庫

しあわせのパン」 三島有紀子

https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8101179.html

 

Text:大西マリコ/ライター パンと本とミルクティーが好きなライター。新しいまちを訪れる際は、事前に好みのパン屋を調べて立ち寄る。好きなパンはカレーパンと、フルーツの入ったハードパン。

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  1. りんごー
    りんごーさん

    映画観ました。ほっこりして、物語の中の雰囲気がとても気に入りました。カンパーニュの語源を知って、カンパーニュが更に好きになりました。パンも幸せも分かち合うって素敵なことですね。

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  2. ねこまるさん

    見てみたいです

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  3. loving rabbitさん

    見たことあります♪

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  4. たか姉
    たか姉さん

    映画で見ました!北海道の風景とキャストと物語がとても素敵で、本当に癒されます。パンをとても丁寧に作る描写が、時間がゆっくりと流れている暮らしを表現していて、ああこんな風に暮らせたらいいのになあって、見ているだけで心がゆったりします。大好きな映画です。

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  6. 120269さん

    パンにはいろいろな力があるなあと感じました。
    パンには食べることで力を得られたり大切にしていきたいと思いました。

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  7. まみみーさん

    「カンパニオ」、「パンを分け合う人たち」素敵な言葉ですね。

    パンは しあわせのはじまりですね。

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