【パン屋さんめぐり 第4回前編】 フロインドリーブ@兵庫県神戸市中央区生田町

パン好きのみなさま、こんにちは。今年も早いもので、2017年ものこりわずか。 寒い日が続いていますが、風邪などひいていませんか? 第4回目を迎えた「Pascoスタッフがいく!全国のおいしいパン屋さんめぐり」。 寒さも忘れるくらい、心高鳴る神戸のパン屋さんをご紹介します。

 

<今回の記事のポイント>

・日本にドイツパン文化を広めた第一人者ハインリッヒ・フロインドリーブさんについて

・神戸の歴史とドイツパンの老舗「フロインドリーブ」の約100年の歩み

・教会を全面リノベーション。お店を移転した理由と、改装のポイント

 

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大空襲・大震災を乗り越えて。
全国のお客さまとともに歩んできた、ドイツパンの老舗「フロインドリーブ」

朝10時。旧神戸ユニオン教会を改築した店舗の入口にスタッフさんが立ち、「いらっしゃいませ」の挨拶とともに、 お店の1日が始まります。開店から途切れることなくお客さまが訪れ、 ショーケースには開店時間に合わせて焼き上げられたパンが美しく並んでいます。 これらのパンは、早いときには午前中で売れてしまうことも。

旧神戸ユニオン教会は、国の登録有形文化財になっています。

 

まだ、日本でパンが親しまれていなかった大正時代から、神戸のパン文化、日本のドイツパン文化を牽引してきた「フロインドリーブ」。1924年に第1号店がオープンして以来、神戸大空襲や阪神・淡路大震災を乗り越えながら、 伝統的な製法でドイツパンを作り続け、今では本場ドイツから職人さんが視察に訪れるほどです。実は、Pascoのパン作りを語るうえでも、フロインドリーブは欠かせない存在。今回は、お店の成り立ちや、お店を長く続けるうえで心がけてきたことなどを、 3代目となるヘラ・フロインドリーブ 上原さんに伺ってきました。

 

ドイツパンを日本に広めた第一人者、ハインリッヒ・フロインドリーブさん。
神戸に、第1号目となるお店をオープン。

フロインドリーブの代表取締役社長、ヘラ・フロインドリーブ 上原さん。ハインリッヒ・フロインドリーブさんのお孫さんにあたり、お店の3代目を継いでいらっしゃいます。

 

パン大国ドイツ。ドイツのパンといえばライ麦を使い、黒くてずっしりとしているのが特徴です。ドイツパンが日本で広まったのは、第一次世界大戦が始まった1914年頃。捕虜として日本にやってきたドイツの方たちが、自分たちの食べるものを自炊しようとパン焼き窯を作り、ドイツ式のパンを焼いたのが始まりだといわれています。

ハインリッヒ・フロインドリーブさんの出身地 ドイツ チューリンゲン州に伝わる作り方で現在も職人さんが1つ1つ焼いています。

 

その捕虜の一人が、今回ご紹介するパン屋「フロインドリーブ」を立ち上げたハインリッヒ・フロインドリーブさん。 日本でドイツパン文化を花開かせた、第一人者として知られています。日本に来た当初は名古屋で過ごし、その後、神戸に拠点を移してパンを作り続けました。

 

−−− こんにちは。本日はよろしくお願いいたします。ヘラさんのおじいさまであるハインリッヒ・フロインドリーブさんは、1924年に神戸で第一号店となるパン屋をオープンされていますが、なぜ名古屋から神戸に拠点を移されたのかご存知ですか?

 

ヘラさん:祖父はもともと海軍の船でパン職人として働いていましたから、海へのこだわりがあったのではないでしょうか? 神戸は昔から港町として栄えていてパンに馴染みのある外国人も多く、商売を始めるうえで良い条件になったのだと思います。

昭和天皇陛下にパンを献上したことも。新聞に掲載された時の写真が、店内の壁に飾られています。

 

−−− 当時、まだ日本はパン文化が浸透していなかった時代ですよね。どうやってパンを作っていたのでしょうか?

 

ヘラさん:祖父がパン職人の見習いとして働いていた頃と同じように、レンガ窯を使って焼いていたようです。この製法は、90年以上経った今も受け継いでいます。今は耐火レンガを内部に敷き詰めた電気窯を使っていますが、製法は当時から変えていません。

 

−−− 実は、レンガ窯を使って焼くという製法は、Pascoのパン作りの原点にもなっています。ハインリッヒ・フロインドリーブさんは、Pascoの創業とともに初代技師長に就任し、Pascoのパン作りの基礎をつくり上げた方と伺っています。

Pascoこと敷島製パンが創業した1920年、パン焼き窯の前での記念写真。右から4人目がハインリッヒ・フロインドリーブさん、その隣、右から5人目が創業者の盛田善平。

 

ヘラさん:祖父とPascoさんには、深い関わりがあったようですね。日本軍の捕虜として名古屋で生活をしていた時に、ご縁が生まれたようです。ちなみに私の父も、1953年に技師として、Pascoさんに勤めていました。

 

第二次世界大戦を乗り越えて、お店を再開。
さらに、ある人との出会いが、お店の未来を変えた。

 

−−− その後、第二次世界大戦もありましたが、お店にどのような影響を与えたのでしょうか?

 

ヘラさん:第二次世界大戦が勃発した1940年当時、祖父のお店はパン屋だけでなく、洋菓子店やレストランなど、 10軒ものお店を神戸市内で展開していました。そんな時に神戸大空襲があり、市内は焼け野原になったそうです。お店が再開したのは、1948年。そして、私は7歳になった1951年に、ドイツから神戸にやってきました。戦後のバラックのような場所で、パンと洋菓子のお店を営業していたのを覚えています。

 

−−− ヘラさんがお店に関わり始めたのは、いつ頃でしょうか?

 

ヘラさん:高校生の頃からずっと、お店の手伝いをしていました。当時は、私の父が経営者としてお店を継いでいました。子どもである私たちが3人姉妹だったため、お店を継がせようとは思ってなかったみたいですね。

 

−−− ヘラさんが3代目を継がれていらっしゃいますが、何かきっかけがあったのでしょうか?

 

ヘラさん:夫との出会いが大きいですね。私が21歳の時、近くのステーキ屋で働いている青年が、お店で出すパンを受け取りに毎日お店に来ていたんです。それで、いつからか毎日のように、私にバラの花を1本プレゼントしてくれるように。最初は、それとなく無視していたんですけど、だんだん素敵な人だなって思い始めて。それが、今の夫です。 私の両親もバラの花を毎日持ってくる彼をみていて、好印象だったようで、結婚までスムーズに決まりました。そして、結婚する時に、夫はパン職人としての人生を歩もうと決意してくれて、 慣れない厳しい修行を乗り越えて、職人としてお店のパンだけでなく、ドイツのお菓子作りを担うようになりました。

ドイツの伝統的なレシピで作られたクッキー。結婚式の引き出物などにも人気。

 

−−− お父さまも喜ばれたのではないですか?

 

ヘラさん:そうですね、夫の懸命な姿に感心したようです。夫からは、経営者は直系の人間が良いだろうと言われ、 私が経営を継ぐことになりました。お店も右肩上がりで順調かと思いきや、バブルが崩壊。さらに、震災がお店を襲ったのです。

阪神・淡路大震災直後の神戸市内の様子。

 

「はやく、ここのパンが食べたい。」
全国のお客さまに支えられて、震災から半年でお店をオープン。

 

−−− 経営者になった直後に、バブルの崩壊や阪神・淡路大震災を経験されたんですね。その当時、お店はどうされたんですか?

 

ヘラさん:震災により、ライフラインはすべてストップしました。このままでは営業できないと判断し、スタッフを全員解雇・休業状態となりました。経営者として、苦しい決断でした。

 

−−−  つらい毎日だったかと思いますが、ヘラさんを支えたものは何だったのでしょうか?

 

ヘラさん:当時、自衛隊員がお店のシャッターや窓をこじ開けて、中にけが人がいないかどうかを確認してまわっていたんです。 お店を壊されては困ると思い、「ここには誰もいません」と書いた張り紙を、シャッターに貼っていました。 後日お店に行ったら、その張り紙に全国から訪れたお客さまからのメッセージが書いてあって。「はやく再開してください」「ここのパンが食べたい」「北海道から来ました」など、たくさん声をのこしてくださっていたんです。 私も、2年くらいはお店を再開できないだろうと思っていましたが、こうやってみなさまが期待してくれているのだから、ゆっくりはしていられない!と勇気づけられました。

 

−−−   全国のファンのお客さまが、お店の再開を楽しみに待っておられたんですね。その後、オープンまでどれくらいの月日がかかったのでしょうか?

 

ヘラさん:震災が起きてから半年で、お店を再開しました。知り合いの工務店に工事を依頼して、オープンの1ヶ月前から窯の準備も始めました。レンガ窯は急激な温度変化に弱いので、少しずつ温度を上げる必要があります。テスト焼きを繰り返して、6月1日にオープンしました。パソコンにのこっていたお客さまデータをもとに、開店のお知らせをDMでお送りしました。 そうしたら、当日からDMや花束をもって涙を浮かべながら、全国からたくさんのお客さまが来てくださって。とっても嬉しかったですね。本当にお客さまのおかげで、ここまでこれたと思います。

 

古くなった教会を、全面リノベーション。
カフェもオープンし、新しいスタートを踏み出した。

前の店から変わらず使い続けている看板。  

 

−−−  今の場所にお店を移転されたのはいつですか?

 

ヘラさん:震災から4年経った1999年のことです。営業を再開したとはいえ、震災で建物が傾いてしまっていて、お店に元気がないように見えたんです。こんな場所で商売を続けるのもどうだろうと思っていた矢先に、夫からこの教会をお店にしようと言われました。

 

−−−  なぜ、この場所を選ばれたのでしょうか?

 

ヘラさん:夫がよく行っていた喫茶店の目の前にこの教会があって、パッとインスピレーションが湧いたみたいです。 その日の夜に、夫から相談があったんですけど、私は絶対に嫌だと言いました(笑) ここはもともと、「神戸ユニオン教会」という立派な教会でしたが、バブルの崩壊とともに廃墟になってしまい、建物も老朽化して蔦も伸びほうだい、まるでお化け屋敷みたいでしたから…。

 

−−− それでも、この場所にお店をかまえようと決意されたんですね。

 

ヘラさん:はい。最終的には、夫のことを信じました。大変だったのは両親でしたね。なんとか押し切って新しい一歩を踏み出そうと決めました。それにこの場所は、私が結婚式を挙げた、思い出の場所でもあるんです。

この教会は、ヘラさんが結婚式を挙げた思い出の場所。カフェスペース前に、当時のお写真が飾られています。

 

−−−  お店作りでこだわったポイントを教えてください。

 

ヘラさん:教会の重厚な雰囲気はそのままに、清潔感や高級感を感じられるような内装を心がけました。私の好みなんですよ。

白を基調とした上品で清潔感のある店内。きれいに磨かれたショーケースには、パンや洋菓子が礼儀正しく並んでいる。

 

ヘラさん:2階のスペースを使って、私の長年の夢だったカフェもオープンすることができました。ずっと、サンドイッチを提供できるお店を作りたいと考えていたんです。私にとってサンドイッチは、学生時代に母がよく作って食べさせてくれた、思い出の味。きゅうりとマヨネーズを和えたシンプルなものでした。当店のパンをいろんな方に気軽に味わってもらうにも、ぴったりだと思い、メニューはオープニングスタッフたちと一緒に考えました。

建築家W.M.ヴォーリズ設計によるゴシックスタイルの教会建築。今はリノーベーションされ、1階は販売スペース、2階はカフェスペースに。

 

ヘラさん:お客さまがお食事をされるテーブルや、椅子にもこだわっています。きれいな空間のほうが、食べものもおいしく感じられますしね。ちなみに、今の内装は娘のアイデア。4年ほど前に、老朽化にともない一新しました。

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フロインドリーブ     http://freundlieb.jp/

住所:兵庫県神戸市中央区生田町4-6-15
(Google Mapはコチラ )
Tel:078-231-6051
営業時間:ショップ10:00~19:00(カフェのラストオーダー18:30)
定休日:水曜日(水曜祝日の場合、翌日木曜が定休日)
予約:月・火・木・金のみ、1日5組までランチタイムの電話予約可(2017年11月現在)
駐車スペースには限りがございますので、予めご了承ください。

 


 

フロインドリーブ 大丸神戸店     https://www.daimaru.co.jp/kobe/
住所:兵庫県神戸市中央区明石町40 大丸神戸店 B1F
(Google Mapはコチラ
Tel: 078-331-8121(大丸神戸店代表番号)
営業時間・定休日:大丸神戸店に準ずる

 

 

フロインドリーブ そごう神戸店     https://www.sogo-seibu.jp/kobe/
住所:兵庫県神戸市中央区小野柄通8丁目1−8 そごう神戸 エブリディ洋菓子売場
(Google Mapはコチラ )
Tel: 078-221-4181(そごう神戸店代表番号)
営業時間・定休日:そごう神戸店に準ずる

 

>>後編を読む方はコチラ

\後編では、人気のパンや、ヘラさんのおすすめのパンの食べ方などを紹介しています!/

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  1. ねこまるさん

    行きたいです

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  2. loving rabbitさん

    食べに行ってみたいです😆

    0
  3. loving rabbitさん

    おしゃれなお店ですね

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  4. tomokomapanさん

    私も母の生徒がこの教会で結婚式をあげたので、この教会の事や近くの喫茶店の事などよく覚えています。とても素敵なカフェになっているんですね。パンが好きで特に黒パン(ドイツ麦パン)が好きなのでぜひお伺いしたいです。

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